2018年3月25日

猛暑

2015.8.1 梅雨があがったと言いながら続いた悪天候が晴れ上がって、遅れに遅れた草刈、ローリングが出来ると喜んだら今日は38度を越す猛暑、テレビも有線も熱射病で倒れる人続出と報じる。とはいえ草刈はやめる訳に行かず一日中トラクター作業。ところが貧乏牧場、キャビンつきのトラクターは皆無、従って冷房なる近代設備とは無縁だから、炎天下、作業帽が日差しをさえぎるだけ。連日、35度の高温がしては熱中症にならないよう老化した頭に鞭打って水を飲み塩分を取る。それでもこの高温はただ事でない。40度に達したところもあるというからと、自分を慰めるのだが、何処まで続く猛暑かなである。

8.11 天気予報では午後から雨で午前中に刈り倒した草の取入れをとの計画が朝から小雨、予定は狂ったが猛暑の終焉である。もっとも、ここ2-3日は夜半から朝までは気温の低下で凌ぎやすくはなっていたのだが、久方ぶりの雨は秋到来を告げている。考えてみれば時間が飛ぶように消えてゆく。何処まで続くと思った猛暑も一瞬だった。

小板は海抜780メートル、高冷地である。真夏の一時を過ぎれば朝晩は都会人が羨望の空気と気温の世界である。勿論、それを狙って別荘が増える。自然が満載の小板では様々な生き物がいる。大はツキノワ熊から猪、狐、狸、いたち、てん、鹿にいたるまで、野生動物に付き合うのは日常である。ただし、豊富だった小板川の魚や水棲動物は住み着いたサギ君の活躍で全滅に近いが、自然と対話するのには事かかない。

8.14 お天気が回復するが、回復すれば仕事が追いかけてくる。朝からトラクターで草刈、牛の予防注射をして、刈おきの草のレーキング。朝晩は涼しくとも日中は30何度、朝夕は過ごしやすいのだが、その温度差の大きさで疲労が蓄積する。それでも真夏は過ぎた。これからは真冬に直行するのみ。そして「早よう暖くう(ぬくう)ならんかのー」と、ぼやく寒い日がやってくる。こうして”年々歳々時相似たり、歳々年々人同じからず”を繰り返す。

真夏の猛暑になると母が亡くなった広島の夏を思い出す。私の育った福井も三国も、まして小板では想像も出来ない暑さだった。おまけに広島名物の夕凪と来る。昭和17年の日本では冷房などはデパートくらい、あとは扇風機があればご馳走と言う世界、団扇と風鈴にひたすら頼るその中で、癌で倒れた母を見送る、私にとって残酷な暑さだった。

小板は深入山と臥竜山との間にある、小さな高原である。最盛期には100人足らずの住民と20ヘクタールの水田があった。かの有名な38豪雪では4メートル近い積雪があった。しかし、夏は爽やかな風が谷間を吹き抜けるし、真夏でも朝夕は季節を忘れる涼しさだった。
が、地球温暖化の影響か、小板にも猛暑がやってくる。今年のように36度も越えると、そして連日ともなると、熱中症も他人事でなくなる。しかも、この時期は牧草の収穫で炎天下のトラクター作業が続く。そのせいか、新型のトラクターは運転席はキャビンで、エアコン、ステレオつきだが、貧乏牧場の年代物のトラクターは屋根もない。3時間も連続作業をしていると目が回ってくる。が、圃場の大きさや作業の都合では、そんなことも言っておれない、「えー、ままよ」と頑張る。勿論、水筒のお茶を飲みながらね。

とにかく小板も猛暑だった。が、幸いなことにお盆を過ぎると、又高冷地の気象が戻ってきた。毎朝の爽やかな空気は小板ならではである。

8.26 猛暑が過ぎて爽やかな空気がやってきて「エー季節やねー」となる。途端に晴天が続かない。御蔭で草刈の予定が狂って作業がうまく行かない。世の中は ”エーこと”と都合の悪い事がセットでやってくる。

2015.8.26 見浦哲弥

0 件のコメント:

コメントを投稿

人気の記事