2018年5月6日

18豪雪

38豪雪と言うのがあった。私がまだ20代だったと記憶しているがとんでもない豪雪で今でもこの地方の語り草である。何しろ茅葺屋根の家が一軒押し潰されて家人が箪笥に畳を差し掛けてその下で震えていたとか、配電線の電柱の下をくぐる時は気をつけないと3000ボルトの高圧に触れるのでウンと頭を下げないと感電するとか、お宮の鳥居は雪に埋もれて跨いで通れたとか、確か長女の裕子さんが1歳のときだと記憶するから65年も昔の事である。

しかし、最近は世界的に温暖化に向かっているとかで、そんな話をしても誰も真面目に聞いてくれない。降雪が少ないのは地球の気温の上昇とか都合のいい話をでっち上げていたら、今年はとんでもない豪雪と相成った。

何しろ初雪が1ヶ月早い。通年は最初の雪は完全に消えて根雪になるのは12月の20日頃、年によってはお正月に雪がなかったこともある。それが11月に降った雪が根雪となったからたまらない。昔は田仕事がすんで茅刈が終わったら家の回りにその茅で雪囲いをするだけだったが、牧場を経営していると根雪になる前にするべき仕事は山積している。牛は雪が降ったとて冬眠をする事はないのだから、通常の冬でも2ヶ月間は雪のために出来ない仕事がある。畜舎のボロ出し(清掃)から始まって、雪囲い、機械の整備、等々である。それが全部未了、牧草地には積雪、おまけに厳冬が始まったのだから、牧草をはじめ濃厚飼料は多くいるわ、私は老化で能力が低下するわで、四面楚歌の状態に突入したんだ。

最近はお隣の八幡地区に降雪の自動計測機が設置されたらしくテレビでも北広島町八幡地区の積雪量として報道される。八幡地区は小板と稜線一つ隔てた隣村、積雪量は殆ど同一か多少小板が多いか、それが全国の積雪量トップと伝えられたのだからたまらない。いや降るとも降るとも、計測器は正確な降雪量を求めて風の影響を受けない所に設置する。ところが現実には無風でシンシンと雪が積もるなど、殆どありえない。風が吹く、吹雪になる、そして窪地に雪を吹き寄せる、テレビは積雪1.8メートルと報道しても現実には2-3メートルにも及ぶところがある、それが雪国の常識なのだ。都会人には理解出来ないだろうが、それが現実、生きのこるためには、それに耐えなければならない。今年も日本の雪国では死亡事故が発生しニュースとして報道された。小板でも何年か前、屋根からの落雪で死亡事故が発生した。中国山地では毎年のように雪による死亡事故が発生するのだ。

しかし根底に横たわる雪国の危険を報道するマスコミは少ない。

国が豊かになり除雪の機械も整備されて国道を初めとして主要道路、生活道路はほぼ完全に除雪されるが、天候までは管理されていないから、無謀な都会人の事故は絶えない。私が交通事故にあったのも対向車が橋の上の雪解け水の凍結で滑走して衝突されたのだ。雪国の常識は都会人の非常識で、事故が多発している。しかも、この地帯はスキー場のメッカ、都会から雪を求めて訪れる人達が凍結した道路を高速でとばす、その間を走る地元人の恐怖は少々ではない、それが1日も早い春を期待するのだ。

例年2月10日を過ぎると冬の表情が衰えて春の匂いが漂ってくるものだが、今年はその兆しもなく、どこまで続く厳寒かという寒さが続いたんだ。やっとお天道様は春を覚えていたか思える日和は3月になってから、桜前線の話が間近になってからだから、今年のお天気は意地が悪い。が、雪ではなくて雨が降るとは、さすがの大雪も少しばかり姿勢を変えた。そして溜まりに溜まった牧場の仕事が蟻の歩みではあるが進み始めた。しかし、残念なことに老齢で体力低下の私は気ばかりが焦る。春きたりなばも大変である。そして季節が見浦牧場にプラスの日和であることを祈るのである。

3月に入って溜まりに溜まった仕事の解決に追いまくられる。掃除が出来なかった畜舎は汚れ放題、朝から晩までショベルが2台とダンプが動いても解決に程遠い。おまけに孫たちの進学、進級で亮子君は仕事のやり繰りと子供の学校行事で目の回る忙しさだ。そして老人夫婦は痛い足を引きずっての作業で能力は激減、近来にない危機的な状態は続いている。幸い牛価が高値安定で何とか経営は維持してはいるのだが、今年も多難な1年が始まっている。

2018.3.26 見浦哲弥


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