2012年6月29日

老化を自覚させられた事故

2012.1.31 とうとう大事故を引き起こして若い連中に迷惑をかけています。私の脳の劣化を自覚させられた事故です。
朝最後に残った牛舎の(上)の除雪にパワーショベルを移動することになりました。いつものことで一人で自走を始めたのですが、前面新雪で川と道路の境は判然としない。いつもなら降車して足場を確認するのに、山側が見えるから川までは距離があると思い込んで進行して土手を踏み抜いて横滑り、小川に転落した。何しろ10トンあまりの重量の機械ですから大変、日ごろは用心していたのにと後悔しても後の祭りでした。
例年は地表が凍結し、踏みつけられた雪も氷になってなまじ地表より堅く、川の上の雪上でも作業ができたのが、今年は地表が凍っていない、雪面は凍っていても地表との境は土も雪も凍らない異常現象が起きていたのを頭が忘れていた。先日も今年の雪は異常だなと確認していたのに、そのことは頭の中から完全に消えていた。そして川岸によりすぎて転落した。

驚きましたね。ショベルが突然横滑り、そのまま小川の中に横転した。最初は何が起きたか理解できなかった。幸い体の一部を打撲しただけで頭はなんとか正常、機外へ出て川からよじ登って驚いた。深さ2メートルの小川に見事にはまりこんでいる。漏油しているかと真っ先に川を覗き込んだが幸い点滴ぐらい。それを確認して家へととんで帰った。
時は厳冬、粉雪がちらつき、気温は零下。私の機械事故の中では最大の事故。老化による思考力の退化を痛感しました。

バケツ容量4.5のショベルは重量が10トンばかりある。引き上げるには大型のクレーンが必要。戸河内の中前石油に依頼したら全機種出払って、手元にあるのは小型車のみで都合が付かない。それにクレーン車は雪道に弱くて積雪があっては協力はできないと。
こうなると智恵を振り絞ってでも自力であげるしかない。隣家の島川君の協力で息子と3人、あーでもない、こうでもないと雪の中で悪戦苦闘、これが目下の現況、あきらめないのが見浦の身上だが、さすがに頭が痛い。

ところが今年は2月にはいっても連日零下何度が続いて作業にならない。春先の出水を考えると胸が痛むが、手のうちようがない。ついにあきらめて正式に引き上げを依頼した。路面の雪が消えたら作業をするとの約束で、心は急くが他に対策のしようがない。現場を見に来てくれた土建屋さんは護岸を破壊して引き起こしてあげるかと提案、しかし、公共物の破壊は修復しておくとはいえ問題が多く、しかも、いまは厳冬、改修は春先以降になる。そしてこの方法で引き上げられる保証もない。悩みに悩みぬきましたね。おかげで食欲はなくなるわ、狭心症の症状は出るわで散々になりました。

幸い3日間の努力で、真横から45度の傾きまで引き起こすことに成功。漏油もないので4月までは目をつぶることにしました。一応役場には届けてあるので処罰は受けるでしょうが、これは自業自得、何があってもあきらめることにしました。
しかし小川とはいえ断面の1/2を遮断している。大水が出ると溢れそうで、最悪を想像すると夜が眠れない。人生の終わりにはとんでもないことも起きるものです。
どうも私の人生は波乱万丈、いつも落とし穴が傍らに控えている。この調子では最後の瞬間はどんな終わり方になりますやら、平和な臨終ではなさそうです。

老人になるということで恐ろしいのは、思考の退化、脳細胞の減少だと何かにつけて思い知らされています。モノ忘れ(ド忘れと言います)が進むのは老人の共通点ですが、私はまだタイヤショベルが操作できる。恐ろしくて疲れは人一倍ですが、牧場の労力配分の中ではまだ作業から離れるわけにはいかない。大変辛いことです。さすがにパワーショベルは恐怖で操作できなくなりましたが、この調子ではこのパソコンの操作もできなくなるのも時間の問題、皆さんに近況を報告するのも不可能になる、その日は遠くなさそうです。

3.9 中前石油に依頼してあったレッカー車が来ました。標準35トン最大50トンの吊り上げ能力の巨大な車が現場に入って吊り上げてくれました。
1月半も川の中に鎮座していたショベルが動き始めたときは嬉しかった。レッカー車のゲージが12トン強を示した由で、他の方法ではだめでしたね。が転落時の3日の作業で45度の傾きまで起こしてあったものだから、雪解けの増水でもかろうじてエンジンルームには水が入らなかった。おかげでエンジンが動いてアームを動かすことができた。
アームをたたんで最高に持ち上げて、それにワイヤーをかける、それが機体を傾かせずに吊り上げる唯一の方法、目が点でした。アームにワイヤーをかけるその工法は知らなかった。
エンジンが動かないと大変だとつぶやいた中前の工場長の言葉が重かったのですね。厳冬の3日間の雪中作業が無駄でなかったので、今回のアクシデントも最悪よりは少しよかったなとは和弥の弁です。
吊り上げられたショベルはオガクズ小屋の前においてあります。片方のキャタピラがはずれていますが、これは春が来て雪が消えてからはめるつもりです。
ただ、事故がなくても軽い財布が今度の支払いに耐えることができるかと今度はそちらの心配をしています。

現金なもので川の中にショベルがないと気が軽くなりました。悩んで悩みぬいたのがうそのようですが、今度は何をしでかすかと不安で時間が過ぎていきます。

2012.3.15 見浦 哲弥

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