2002年6月2日

見浦牧場の堆肥を使用される皆さんへ

 堆肥とは、さまざまな有機物を原料として、好気的発酵により腐熟させ、組成的に安定したものを言います。本来は藁(わら)類、落ち葉、野草などを発酵したものを堆肥とよび、家畜糞尿を主原料としたものを厩肥(キュウヒ)と呼んで区別していました。しかし、現在では、都市廃棄物、下水汚泥、食品の残りかす、林業廃棄物など、いろいろな有機物が原料として利用されており、原料の種別に関係なく、堆肥化されたものはすべて堆肥と呼んでいます。したがって、原料によってそれぞれ特徴があり、使う人がそれを良く理解して使用しなければなりません。たとえば、下水汚泥を原料としたものは、重金属を含んでいる可能性があります。食品の残りかすを原料としたものは、塩分と油分が含まれており、その含有量によっては種子の発芽に重大な影響を与えます。

家畜糞尿を使用した堆肥も、家畜の種類によって性格が大きく違います。

1.鶏糞を原料にしたもの

  これにも2種類あって、使用方法が異なります。

l 生の鶏糞をそのまま火力乾燥したもの

 (最近は、環境問題が盛んに議論されますので、養鶏場によっては生の鶏糞をそのまま乾燥する場合があるそうです。)
  この場合は、そのまま畑に施すと、生の鶏糞に戻ります。弊害があるので、堆肥等に混ぜて、腐らせてから畠に入れましょう。

l 発酵鶏糞

  生の鶏糞を腐らせてから乾燥してあります。この肥料は、窒素、燐酸、カリなどの肥料成分が多く、有機の化成肥料と考えてください。大変、効果の高い肥料ですが、土を肥やすのではなく悪くします。おいしい野菜やお米をお望みの方は、土を肥沃にする堆肥と組み合わせて使ってください。

2.牛糞を原料にしたもの

  敷き藁の種類や堆肥の作り方によって、いくつかの性格の違う堆肥になります。
おがくず、かんなくずなど木質系の材料を敷料とした牛糞で作った堆肥

    見浦牧場の堆肥はこれにあたります。昔の藁や刈り草が敷料の牛糞と違って、硬い繊維分が多い木材の粉が原料ですから(炭素率が高いといいます)発酵しにくい欠点があります。しかし、良く発酵したこの堆肥は、土を肥沃にする力が大変強く、他の肥料との上手な使い方を覚えると、昔ながらの甘い味の野菜やお米を作ることができます。

    敷料には古紙やほとんど敷料を使用しない場合、汚れた敷料を何度も乾かして使用したもの、などいろいろあります。牛糞堆肥といっても、肥料成分の高いものは、土質改良になるほどの量を入れると肥料過多になるものもありますので、その肥料の作り方や組成を良く調べてから使用するようにしましょう。

3.豚糞を原料としたもの

牛糞堆肥と鶏糞堆肥の中間の性質を持っていると言われます。しかし、敷き藁を使わない、または、使っていても量が少ないので、肥料分の高い堆肥です。作物は良くできますが、土の改良には向きません。使い方はそれぞれ工夫してください。

4.その他の有機物を原料としたもの
l バーク堆肥

  木の皮を原料としています。鶏糞や牛糞など家畜の排泄物を加えてはいますが、主に木の皮を粉砕、発酵したものです。主に果樹園などで使用されています。畠や田んぼには牛糞堆肥のほうがよいと思います。

l 残飯や生ごみなどを原料としたもの

   この堆肥は作物の生育が悪くなることがあります。完成した堆肥に脂肪分が多いのが原因です。とくに脂肪分が1.2%以上になると、生育の不良が確実になります。この場合、オガコやプレナーかすなどの木材の粉を加えて、何回か積み替えると、含まれている油分が分解されます

堆肥は土の中で徐々に分解して、暗褐色でコロイド状の腐植になります。腐植は肥料を土に結びつける力が大変強いので、施した肥料が流れにくくなり、作物が作りやすくなります。その上、腐植は少しづつ分解して土になり、そのとき、腐植中の微量要素が作物に吸収されてうまみを作ります。平均して一年に分解して減っていく腐植の量は10aあたり100~150kgといわれ、これは堆肥1,500kg以上からできる腐植の量に相当します。ですから土を肥やすには、それ以上の堆肥を毎年投与し続けなければなりません。

見浦牧場の堆肥は、三回以上の積み替えと、2年以上の発酵期間をとっていますので、土作りのための大量投与に十分使えます。安心してご使用ください。

ただし、窒素などの肥料分は少ないので、鶏糞や油粕や化成肥料などで、不足の成分を補ってください。

安全でおいしい野菜やお米は、健康な土から生まれます。見浦牧場の堆肥を上手に使って、健康な土で育った健康でおいしい作物を食べる贅沢を味わってください。

2002年6月2日
見浦 哲弥

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