2002年7月29日

おいしい牛肉(2)

 世界中には、いろいろな種類の牛がいます。有名なアンガスやヘレホードなど、国内でも黒牛の和牛を始めとして、肥後の赤牛、山口の無角、それに乳も肉もと改良された日本ホルスタイン・・・・・無数にあります。しかし、その中で和牛肉はトップの味を誇っているのです。
牛肉の自由化が外交の日程に登り初めた頃、和牛の種雄牛や精液の国外流出を禁止していた規制の網をくぐって、アメリカに2頭の雄牛が流れでました。続いてオーストラリアへ。牛肉の輸出を考えていた両国にとって、和牛の血統を導入することは、牛肉の味を良くするために、必要不可欠の条件だったのです。
言い替えれば、世界最高の味の牛肉は和牛だと、私どもは思っています。
でも、その最高の牛の味も、飼い方次第で色々と変わります。その話をしましょう。
まず、見浦牧場の飼育方法を説明しましょう。
子牛は生まれて10日目頃から、分娩房(産室)から抜け出して冒険旅行に出ます。見浦牧場には、分娩房が7つある牛舎と4つある牛舎と2つの分娩用の牛舎があります。そのため、常時、ほぼ同じ頃に生まれた子牛が何頭かいますから、遊び友達に不自由はしません。好奇心旺盛な子牛たちは、牛舎の周囲を探検したり、イタズラしたり、友達の牛房に遊びに行ったり、おなかが減ったとき以外は母親の所へ帰ってこない、なんて、不届きな奴までいます。
見浦牧場では大きくなると、集団で群れを作らせて飼育するので、それにあわせて小さい時から自由にさせるのです。
しかし、問題もあります。1頭でも病気になると、時間を置かないで皆同じ病気を患います。
皆さんも良くご存知のように、病菌も学習します。多頭飼育になればなるほど、病菌が学習してタフになり、病気が直りにくくなるのです。ですから、一般的にはカーフハッチなどといって、親から離して、一頭ずつ別飼にするなどの方法とりますが、見浦牧場では病気に強い強健性を、血統選抜の基準の一つにすることで対応しています。また、いかに早く病気をみつけて先手をうつか、病菌が薬に対して抵抗力をつけにくくするために、いかに投薬を最小に押さえるかという点に努力しています。
ですから、子牛は小さいときから集団を組んで、元気いっぱい遊び回っています。これによって、体は健康で丈夫になり、肉のうまみの元である筋肉が十分に発達します。
「命の通っている健康な食品を消費者に届ける」、これも見浦牧場のこだわりです。
でも、文章で書くと1行ですが、実際は大変です。なにしろ牛語は人間には通じません。学校や専門書をどんなによく学んでも、症状が出るまでは判らないのです。それでは解決になりません。ですから、常日頃牛とふれあい、観察し、失敗しながら積み上げて、やっと、わずかな異変も見逃さずに、適切な治療が行えるようになるのです。
体で覚える、これには時間の積み上げが必要なのです。
美味しい牛肉を消費者の皆さんにお届けするためには、大変な農民の努力が費やされている事を、消費者の方にも、畜産関係者の方にも、流通業者の方にも、是非理解していただきたいと思います。

2002/7/26
見浦 哲弥

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